2024年3月3日



「さぁ、この人です」(要約)


新約聖書:ヨハネの福音書18章28節〜19章16節



ユダヤ人たちは、神を冒涜した罪でイエス様に死刑の判決を下しました。そしてイエス様を十字架につけるためピラトのもとに連れて行きます。ピラトは、この時ユダヤを支配していたローマの総督です。ユダヤ人たちはピラトに、「その教えで民衆を扇動した」「ユダヤ人の王と名乗った」と、イエス様を政治犯として訴えます。実は彼らが訴えたのはイエス様への妬みと憎しみからでした。


1、ピラトの尋問

ピラトは、彼らの訴えがユダヤ人の宗教上の問題であることにすぐに気づきます。それでユダヤ人たちに、自分たちの律法に従って裁くように言います。しかしユダヤ人たちは「私たちには、だれを死刑にすることも許されてはいません。」と答えます。ピラトはイエス様をローマの法律に基づいて尋問しますが、ローマ法の犯罪に当たる罪はありません。この時イエス様は、「わたしの国はこの世のものではない。」「わたしは真理の証をするために生まれ、このことのために世に来た。」と言われました。


そのためピラトは「私は、あの人には罪を認めません」とユダヤ人たちに伝え、過越の祭りの時にユダヤ人のため1人の人を釈放するのが習わしになっていたので、釈放することを提案します。しかしユダヤ人たちはその提案を拒絶し、大声を上げて「この人ではない。バラバだ」と叫びます。

次にピラトは、イエス様を徹底的に痛めつければユダヤ人たちはイエス様の処刑を諦めるだろうと考え、イエス様をむち打ちにします。兵士たちはイエス様にイバラで編んだ冠をかぶせ、紫色の着物を着せて嘲笑します。冠は王様の象徴、紫色の衣は王様の衣服の象徴。彼らはイエス様を「ユダヤ人の王様。万歳。」と言い、顔を平手で叩きました。ピラトはこのイエス様をユダヤ人たちの前に引き出して「さあ、この人です。」と言います。しかしピラトの思惑ははずれ、祭司長や役人たちはイエス様を見ると、再び「十字架につけろ。十字架につけろ。」と叫びました。

官邸に入ったピラトは、「あなたはどこの人ですか。」と尋ねます。イエス様に権威を感じたのかもしれません。しかし、神様のご計画に黙って従っておられたイエス様は、彼に何の答えもなされませんでした。このようにピラトはイエス様を釈放しようと努力しますが、ユダヤ人たちの「もしこの人を釈放するなら、あなたはカイザルの味方ではありません。自分を王だとする者はすべてカイザルに背くのです。」ということばを聞いて、裁判の席に着きます。ユダヤ人たちが自分に背くようなことになれば、ローマから管理能力を問われて自分の地位が危なくなります。アウグストの時代から、皇帝が神として崇拝される時代であったことも関係していたのかもしれません。


2、「さあ、この人です」〜イエス様の受難とその意味

この時のイエス様の様子がイザヤ書53章に描かれています。イエス様が神様の御心に従順に従っていかれる様子は、3節(「彼はさげすまれ、人々からのけ者にされ、…人が顔を背けるほど蔑まれ、私たちも彼を尊ばなかった。」)、4節(「彼は罰せられ、神に打たれ、苦しめられたのだと。」)、7節(「彼は痛めつけられた。彼は苦しんだが、口を開かない。ほふり場に引かれていく小羊のように、毛を刈る者の前で黙っている雌羊のように、彼は口を開かない。」)と同じです。

また、イエス様が自分から苦しみをその身に負われたことは、4節「(まことに彼は私たちの病を負い、私たちの痛みを担った。))、10節(「彼は、自分のいのちを罪過のためにいけにえ」)と同じです。

また、このイエス様の受難は父なる神様の御心だったことが、5節(「しかし、彼は、私たちのそむきの罪のために刺し通され、私たちの咎のために砕かれた。」)、6節(「しかし、主は、私たちのすべての咎を彼に負わせた」。)、10節(「しかし、彼を砕いて、痛めることは、主の御心であった。」)に記されています。

主イエス様の苦しみは、私たちの病や痛みを担うため、私たちのすべての咎を負うため、そして自分のいのちを罪過のためにいけにえとするためでした。私たちは、5節にあるように「彼への懲らしめが私たちに平安をもたらし、彼の打ち傷によって、私たちは癒された。」(5節)のです。また「わたしの正しいしもべはその知識によって多くの人を義とし、彼らの咎を彼が担う。」(11節)とあるように、このことを聞いて信じた者は救われるのです。


3、勧め

ヘブル人への手紙2章17・18節のみことばです。「そういうわけで、神のことについて、あわれみ深い、忠実な大祭司となるため、主はすべての点で兄弟たちと同じようにならなければなりませんでした。それは、民の罪のために、なだめがなされるためなのです。主は、ご自身が試みを受けて苦しまれたので、試みられている者たちを助けることがおできになるのです。」

あわれみ深いとは、共に苦しみ、共に耐えるということです。傷ついている人のところ、痛みを負っている人のところに行き、恐れや悲しみや苦しみを分かち合うということです。泣く人と共に泣くことです。そうした大祭司となるため、イエス様はあらゆる点で私たちと同じようになられました。

皆さんの中に、誰かの言葉に傷ついて立ち直れない方はいませんか。嘲られ、ムチ打たれ、辱められたこの方に目を向けましょう。主に助けていただきましょう。あなたが痛みや苦しみの中にある時、イエス様はあなたのそばにいてくださいます。主はあなたと共に苦しみ、耐えてくださる方です。イエス様は、あなたを癒し、あなたに平安を与えてくださいます。主を待ち望みましょう。


説教者:加藤 正伸 長老




<ヨハネの福音書 18章28〜40節>

28 さて、彼らはイエスを、カヤパのところから総督官邸に連れて行った。時は明け方であった。彼らは、過越の食事が食べられなくなることのないように、汚れを受けまいとして、官邸に入らなかった。

29 そこで、ピラトは彼らのところに出て来て言った。「あなたがたは、この人に対して何を告発するのですか。」

30 彼らはピラトに答えた。「もしこの人が悪いことをしていなかったら、私たちはこの人をあなたに引き渡しはしなかったでしょう。」

31 そこでピラトは彼らに言った。「あなたがたがこの人を引き取り、自分たちの律法に従ってさばきなさい。」ユダヤ人たちは彼に言った。「私たちには、だれを死刑にすることも許されてはいません。」

32 これは、ご自分がどのような死に方をされるのかを示して話されたイエスのことばが成就するためであった。

33 そこで、ピラトはもう一度官邸に入って、イエスを呼んで言った。「あなたは、ユダヤ人の王ですか。」

34 イエスは答えられた。「あなたは、自分でそのことを言っているのですか。それともほかの人が、あなたにわたしのことを話したのですか。」

35 ピラトは答えた。「私はユダヤ人ではないでしょう。あなたの同国人と祭司長たちが、あなたを私に引き渡したのです。あなたは何をしたのですか。」

36 イエスは答えられた。「わたしの国はこの世のものではありません。もしこの世のものであったなら、わたしのしもべたちが、わたしをユダヤ人に渡さないように、戦ったことでしょう。しかし、事実、わたしの国はこの世のものではありません。」

37 そこでピラトはイエスに言った。「それでは、あなたは王なのですか。」イエスは答えられた。「わたしが王であることは、あなたが言うとおりです。わたしは、真理のあかしをするために生まれ、このことのために世に来たのです。真理に属する者はみな、わたしの声に聞き従います。」

38 ピラトはイエスに言った。「真理とは何ですか。」彼はこう言ってから、またユダヤ人たちのところに出て行って、彼らに言った。「私は、あの人には罪を認めません。

39 しかし、過越の祭りに、私があなたがたのためにひとりの者を釈放するのがならわしになっています。それで、あなたがたのために、ユダヤ人の王を釈放することにしましょうか。」

40 すると彼らはみな、また大声をあげて、「この人ではない。バラバだ」と言った。このバラバは強盗であった。


<ヨハネの福音書 19章1〜16節>

1 そこで、ピラトはイエスを捕らえて、むち打ちにした。

2 また、兵士たちは、いばらで冠を編んで、イエスの頭にかぶらせ、紫色の着物を着せた。

3 彼らは、イエスに近寄っては、「ユダヤ人の王さま。ばんざい」と言い、またイエスの顔を平手で打った。

4 ピラトは、もう一度外に出て来て、彼らに言った。「よく聞きなさい。あなたがたのところにあの人を連れ出して来ます。あの人に何の罪も見られないということを、あなたがたに知らせるためです。」

5 それでイエスは、いばらの冠と紫色の着物を着けて、出て来られた。するとピラトは彼らに「さあ、この人です」と言った。

6 祭司長たちや役人たちはイエスを見ると、激しく叫んで、「十字架につけろ。十字架につけろ」と言った。ピラトは彼らに言った。「あなたがたがこの人を引き取り、十字架につけなさい。私はこの人には罪を認めません。」

7 ユダヤ人たちは彼に答えた。「私たちには律法があります。この人は自分を神の子としたのですから、律法によれば、死に当たります。」

8 ピラトは、このことばを聞くと、ますます恐れた。

9 そして、また官邸に入って、イエスに言った。「あなたはどこの人ですか。」しかし、イエスは彼に何の答えもされなかった。

10 そこで、ピラトはイエスに言った。「あなたは私に話さないのですか。私にはあなたを釈放する権威があり、また十字架につける権威があることを、知らないのですか。」

11 イエスは答えられた。「もしそれが上から与えられているのでなかったら、あなたにはわたしに対して何の権威もありません。ですから、わたしをあなたに渡した者に、もっと大きい罪があるのです。」

12 こういうわけで、ピラトはイエスを釈放しようと努力した。しかし、ユダヤ人たちは激しく叫んで言った。「もしこの人を釈放するなら、あなたはカイザルの味方ではありません。自分を王だとする者はすべて、カイザルにそむくのです。」

13 そこでピラトは、これらのことばを聞いたとき、イエスを外に引き出し、敷石(ヘブル語ではガバタ)と呼ばれる場所で、裁判の席に着いた。

14 その日は過越の備え日で、時は第六時ごろであった。ピラトはユダヤ人たちに言った。「さあ、あなたがたの王です。」

15 彼らは激しく叫んだ。「除け。除け。十字架につけろ。」ピラトは彼らに言った。「あなたがたの王を私が十字架につけるのですか。」祭司長たちは答えた。「カイザルのほかには、私たちに王はありません。」

16 そこでピラトは、そのとき、イエスを、十字架につけるため彼らに引き渡した。