2023年12月3日



「メシヤ預言の歌」


旧約聖書:詩篇2篇



イエス様は復活した日の午後、エマオに向かう弟子たちに「わたしについてモーセの律法と預言者と詩篇に書いてある事は、必ず全部成就する」(ルカ 24:44)と話されました。特に詩篇2篇と110篇はメシヤ預言と言われています。



1 歴史的な背景


最初に歴史的な文脈から説明します。この詩篇はダビデのことを書いています。1〜3 節で、ダビデがイスラエルの王となったことを知り、周辺の国のペリシテ人やアンモン人やアラム人の王が次々にダビデに反逆し、戦いを仕掛けてきます。しかしダビデは彼らを打ち破ります。1節から3節はこの時のことです。「さあ、彼らのかせを打ち砕き、彼らの綱を解き捨てよう。」はこれらの王のことばです。「主に油をそそがれた者」とはダビデのことです。

4〜6 節に、神は、反逆する者たちを笑い、あざけられる。激しく怒り、恐れおののかせる、とあります。なぜならダビデは神ご自身が立てた王だからです。聖なる山シオンとはエルサレムのことです。

7節の『あなたは、わたしの子。きょう、わたしがあなたを生んだ。』とはダビデの即位のことです。

8節で神はダビデに国々を与えると言う約束をします。

9節は、ダビデが鉄の杖で国々を支配し、敵対する国は容赦なく打ち砕くということです。

10〜12節で、だから、王たち、支配者たちよ、天の神があなた方を支配する王を立てたことを悟り、慎みなさい。神を恐れ、神に仕えなさい。天地万物を支配する神が怒り、あなた方が滅びないために。神の怒りがすぐにも燃えようとしているからだというのです。「幸いなことよ。すべて主に身を避ける人は」は、ダビデは常に主に助けを求め、守られていたことの証しです。



2 メシヤ預言としての説明


次にメシヤ預言として読んでいきましょう。

(1) 1〜3 節「神に敵対する者たちとイエスの受難

1・2 節は、使徒の働き 4 章 25 節〜28 節に引用されています。ペテロとヨハネが、宮で、イエスの例を挙げて死者の復活を述べ伝えていると祭司たちに捕まります。一旦留置されますが取り調べの後釈放されます。彼らが帰って来たとき、信徒が心を一つにして祈ります。この中で、イエス様が、ヘロデやポンテオ・ピラト、祭司長、律法学者らによって殺されたのは、この詩篇に預言されているとおりだと祈っています。実はこの箇所は、ルターやカルバンといった宗教改革者たちを大変励ましました。皆さんの中で、日常生活や仕事で同じような経験をした方はいないでしょうか。私たちは主に油を注がれた者。どんな時も主が守って下さることを信じましょう。

3節は、私たちにイエス様による罪からの解放を想起させます。詩篇107篇14節「主は、彼らを闇と死の影から連れ出し彼らのかせを打ち砕かれた。」


(2)4節から6節「神の救いの宣言」

天におられる神様は、信仰者を苦しめている人たちを笑い、嘲ります。また神は彼らを激しく怒り、恐れさせます。ここに私たちのゆとりがあります。私たちは神様の子供です。その私たちを苦しめたら、父なる神が黙っていないぞということです。私たちが仕返しするのではありません。後のことは神様にお委ねしましょう。6節。神は救い主キリスト・イエスを立てました。カルバリ山の十字架です。


(3)7節から9節「神の子キリストの支配」

この7節は、使徒の働き13章33節に引用されています。パウロは、旅先のアンテオケで、そこに住むユダヤ人たちに伝道します。このとき彼は、「神は、ダビデの子孫から、約束に従って、イスラエルに救い主イエスをお送りになった。」(23節)この方は民の指導者たちによって殺されたが、神はイエスを甦らせ、私たちの子孫に約束を果たされた。詩篇第二篇に「あなたは、わたしの子。今日、わたしがあなたを生んだ。」と書いてある通りだ、と話すのです。「主の定め」とはこのことです。

8節で、天の神様は、イエス様に「わたしに求めよ」と言われます。このときイエス様が神様に求めたのは何でしょう。それは、罪深く滅びるしかない私たちに永遠の命を与えることです。(ヨハネの福音書17章2節)

9節。イエス様は世界のすべての人を支配します。しかしその支配は「鉄の杖」ではなく羊飼いの杖。福音です。「彼はいたんだ葦を折ることもなく、くすぶる灯心を消すこともなく、まことをもって広義をもたらす。」(イザヤ 42:3)のです。


(4)10節から12節「福音宣教」

それゆえ、神を恐れ、神を愛せよ。御子に聞き従いなさい。聞き従わない者たちには神の怒りが下り滅びるからだ。神の怒りを軽々しく考えてはいけない。その日がすぐにもこようとしてる。すべてにおいて主イエス・キリストにより頼む者は幸せを得ることができるということです。神の民である私たちは、いつかキリストと共にこの世界を支配する者となるのです。



3 まとめ


この詩篇はおおよそ紀元前 1000年に書かれました。それから 1000年後、マリヤから生まれた男の子がイエス・キリストです。

私たちは神様の前で罪深く、砂粒よりも小さな存在です。しかし神様は、そのような私たちを愛し、私たちを救うため、神のひとり子を人としてこの世に与えて下さいました。これがクリスマスです。イエス様は、まことの神でありまことの人として過ごし、十字架につけられて死なれますが、3 日目に甦られ、今も生きておられます。この方を救い主であると信じるとき、どんな人でも、すべての罪が赦され永遠のいのちが与えられます。本当の幸せとはキリストのうちにある人生のことです。



説教:加藤 正伸 長老



<詩篇 2篇1〜12節>

1 なぜ国々は騒ぎ立ち、国民はむなしくつぶやくのか。

2 地の王たちは立ち構え、治める者たちは相ともに集まり、主と、主に油をそそがれた者とに逆らう。

3 「さあ、彼らのかせを打ち砕き、彼らの綱を、解き捨てよう。」

4 天の御座に着いている方は笑い、主はその者どもをあざけられる。

5 ここに主は、怒りをもって彼らに告げ、燃える怒りで彼らを恐れおののかせる。

6 「しかし、わたしは、わたしの王を立てた。わたしの聖なる山、シオンに。」

7 「わたしは主の定めについて語ろう。主はわたしに言われた。『あなたは、わたしの子。きょう、わたしがあなたを生んだ。

8 わたしに求めよ。わたしは国々をあなたへのゆずりとして与え、地をその果て果てまで、あなたの所有として与える。

9 あなたは鉄の杖で彼らを打ち砕き、焼き物の器のように粉々にする。』」

10 それゆえ、今、王たちよ、悟れ。地のさばきづかさたちよ、慎め。

11 恐れつつ主に仕えよ。おののきつつ喜べ。

12 御子に口づけせよ。主が怒り、おまえたちが道で滅びないために。怒りは、いまにも燃えようとしている。幸いなことよ。すべて主に身を避ける人は。