新約聖書：マタイの福音書　1章1〜17節

NHKの番組のファミリーヒストリーをご存知でしょうか。有名な俳優の両親や先祖のことを、時代の写真や証言をもとに振り返ると言うものですが、ここに家系図が出てきます。また大河ドラマを見ていると有名な武将の家系図が気になります。

今日はマタイの福音書1章にあるイエス・キリストの系図からお話をします。いつもは流し読みしている箇所かもしれませんが、アドベント、待降節ということですので、この系図から神様のことを学んでいきたいと思います。 3つのポイントに分けてお話をします。

この福音書は、マタイという人が、1世紀のイスラエルのユダヤ人キリスト者たちに向けて書いたと言われています。その目的は、イエス・キリストの誕生、宣教、十字架、復活、昇天を伝えることです。

先ず、注目して欲しいのは、一節に、「イエス・キリストの系図」と書かれていることです。これはイエスがキリストであることの宣言です。

次に、そのイエス様は「アブラハムの子孫」だと書かれています。神はアブラハムを召し出され、彼によって地のすべての民を祝福されると、約束されました。神はアブラハムに、「あなたの子孫によって地のすべての国々は祝福を受けるようになる。」(創世記22章18節)と言われました。

また、イエス様は「ダビデの子孫」だと書かれています。正当なダビデの王位継承者ということです。神様はダビデにこう言われました。「 あなたの日数が満ち、あなたがあなたの先祖たちとともに眠るとき、わたしは、あなたの身から出る世継ぎの子を、あなたのあとに起こし、彼の王国を確立させる。彼はわたしの名のために一つの家を建て、わたしはその王国の王座をとこしえまでも堅く立てる。」サムエル記 第二　7章12〜13節

イエス様は、神様がアブラハムに約束されてから約2千年後、ダビデに約束されてから約千年後に、お生まれになりました。

ルカの福音書3章に、もう一つイエス様の系図があります。これはマリアの系図と言われています。王位継承ではなくイエス様が「肉によればダビデの子孫」であることを示しています。例えばダビデの次にソロモンではなく、もう人の子ナタン(31節)の名前が出てきます。マリアの名前はありませんが、マリアはヘリの子、ヨセフはヘリの女婿なのでヘリの子(23節)と呼ばれています。

なお、アブラハムからダビデまで14代、ダビデからバビロン捕囚まで14代、捕囚からキリストまで14代と書かれています。これはマタイによって計画的に配列されているもので、いくつかの世代が省略されていますが、当時認められている系図様式だそうです。

ここで、皆さんの中に、イエス様はこの世界の創造の前からおられるのなら、どうしてダビデの子孫なのかと疑問に思う方がいらっしゃるかもしれません。それについて、マルコの福音書12章35節?37節を見て見ましょう。イエス様は宮で群衆に教えておられたとき、

「律法学者たちは、どうしてキリストをダビデの子と言うのですか。」と尋ねます。そして37節で、このように言われました。「ダビデ自身がキリストを主と呼んでいるのに、どういうわけでキリストがダビデの子なのでしょう。」イエス様はこの世界ができる前からおられる、その神様が人となってお生まれになったと言うことです。

次にこの系図の内容です。この系図を見ると、アブラハムやダビデのように神を信じる立派な人もいれば、なぜこの系図に名前を載せたのかわからない人もいます。

例えばここに女性の名前が3人出てきます。ラハブ、ルツ、ウリヤの妻(バテシェバ)。ラハブは外国人で、元は不道徳な女性でした。ルツも大変素晴らしい女性ですが、モアブ人です。バテシェバはウリヤの妻でしたが、ダビデが不純な関係を持った女性です。ダビデはウリヤから妻を奪っただけでなく、殺してしまいます。本来ならウリヤという名前は表沙汰にはしないと思うのですが、マタイはあえて記しているように思います。

 さらに、この系図には、真の神様から離れて偶像を崇拝し、イスラエルの人々に罪を犯させ、アッシリアやバビロンに滅ぼされる原因を作った王の名前もあります。しかし、大切なことは神様が、ダビデやアブラハムに約束したとおり救い主を子孫として与えられたと言うことです。

皆さんの中で、思春期のとき自分の先祖に関心を持った方がいらっしゃるのではないでしょうか？思春期の課題の一つはアイデンティティと言われています。自分という存在がわかるようでいてわからない。今生きて生活している社会の中で、自分が意義のある存在だと言う感覚が持てない。先祖に関心を持つのもその頃です。先祖に偉い人がいたのだなと思うと少し誇らしくなるし、写真をみて自分と同じような顔をした先祖を見つけると少し安心するわけです。今の時代、特に女の子は小学校の5年生位で思春期を迎えるようですが。親にとっては大変な時期です。

旧約時代のイスラエル人にとって系図は、神の民としての証しであり、ユダヤ人としてのアイデンティティ、自己認識と結びついていました。イスラエルのユダヤ人は、この系図の中に、自分とイエス様との関係を見たのです。

しかし私たち信仰者に系図は必要ありません。私たちのアイデンティティ、自己認識は、神の子であるということです。そう言っても、そのことが曖昧になったり、ぐらついてしまいます。ときには忘れてしまう。日曜日の礼拝は、私たちに自分が神の子であると言うことを思い出す日なのです。

神様は創造主です。私たちは被造物です。その私たちを罪、死、悪魔から救うために、イエス・キリストはこの世に来てくださいました。

「神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに、世を愛された。それは御子を信じる者が、ひとりとして滅びることなく、永遠のいのちを持つためである。」ヨハネの福音書　3章16節

またガラテヤ人への手紙　3章26節には、「あなたがたはみな、キリスト・イエスに対する信仰によって、神の子どもです。」

またエペソ人への手紙　1章5節には、「神は、みむねとみこころのままに、私たちをイエス・キリストによってご自分の子にしようと、愛をもってあらかじめ定めておられました。」

私たちが神様を選んだのではありません。この神様にはこんなご利益がある、病気を直してもらえると言うことで信じたわけではありませんね。神様の方で私やあなたを選んだのです。この罪深い私やあなたを選んでくださったのです。

「愛する者たち。私たちは、今すでに神の子どもです。後の状態はまだ明らかにされていません。しかし、キリストが現れたなら、私たちはキリストに似た者となることがわかっています。なぜならそのとき、私たちはキリストのありのままの姿を見るからです。」ヨハネの手紙 第一　3章2節

イエス様も、マルコの福音書3章で「神のみこころを行う人はだれでも、わたしの兄弟、姉妹、また母なのです。」と言われました。

イスラエルは、神の民と呼ばれていました。けれども罪を犯し続けたため、アッシリアやバビロンに捕囚の民として連れて行かれました。しかし、神様はその民を見捨てませんでした。そして約束通り、救い主がお生まれになりました。これがクリスマスです。

神様が人の子となって生まれてきてくださいました。それは、私たちを神の子とするためです。ですからクリスマスは感謝の日なのです。

＜新約聖書　マタイの福音書　1章1〜17節＞

1 アブラハムの子孫、ダビデの子孫、イエス・キリストの系図。

2 アブラハムにイサクが生まれ、イサクにヤコブが生まれ、ヤコブにユダとその兄弟たちが生まれ、

3 ユダに、タマルによってパレスとザラが生まれ、パレスにエスロンが生まれ、エスロンにアラムが生まれ、

4 アラムにアミナダブが生まれ、アミナダブにナアソンが生まれ、ナアソンにサルモンが生まれ、

5 サルモンに、ラハブによってボアズが生まれ、ボアズに、ルツによってオベデが生まれ、オベデにエッサイが生まれ、

6 エッサイにダビデ王が生まれた。ダビデに、ウリヤの妻によってソロモンが生まれ、

7 ソロモンにレハブアムが生まれ、レハブアムにアビヤが生まれ、アビヤにアサが生まれ、

8 アサにヨサパテが生まれ、ヨサパテにヨラムが生まれ、ヨラムにウジヤが生まれ、

9 ウジヤにヨタムが生まれ、ヨタムにアハズが生まれ、アハズにヒゼキヤが生まれ、

10 ヒゼキヤにマナセが生まれ、マナセにアモンが生まれ、アモンにヨシヤが生まれ、

11 ヨシヤに、バビロン移住のころエコニヤとその兄弟たちが生まれた。

12 バビロン移住の後、エコニヤにサラテルが生まれ、サラテルにゾロバベルが生まれ、

13 ゾロバベルにアビウデが生まれ、アビウデにエリヤキムが生まれ、エリヤキムにアゾルが生まれ、

14 アゾルにサドクが生まれ、サドクにアキムが生まれ、アキムにエリウデが生まれ、

15 エリウデにエレアザルが生まれ、エレアザルにマタンが生まれ、マタンにヤコブが生まれ、

16 ヤコブにマリヤの夫ヨセフが生まれた。キリストと呼ばれるイエスはこのマリヤからお生まれになった。

17 それで、アブラハムからダビデまでの代が全部で十四代、ダビデからバビロン移住までが十四代、バビロン移住からキリストまでが十四代になる。