2022年10月9日



「主の良くしてくださったことを何一つ忘れるな。」

旧約聖書:アモス書1章〜2章




今日はアモス書からお話ししたいと思います。

今までは、一つの小預言書は1回でお話しさせていただきましたが、アモス書は3回に分けてお話ししたいと思います。1回目は、1章から2章までに書かれた「諸国に下る裁き」の預言から、私たちにどのようなことが教えられているのかについてお話しさせていただきます。



T.アモスの紹介(1:1〜2)


まず、1章1節2節には、アモスの紹介が書かれています。

アモスが活動した時期は、南ユダ王国ではウジヤ王の治世であり、北イスラエル王国ではヤロブアム二世の治世でした。この時代は、物質的には非常に繁栄した時代ですが、偶像礼拝がまん延した時代でもあります。

預言者アモスは南ユダ王国の出身で、エルサレムの南20キロくらいの位置にあるテコアという場所の出身です。

次に、「アモス」という名前ですが、これは「重荷を負うもの」という意味です。今まで見てきた小預言書の預言者の名前は、ユダヤ人の中ではありふれたもので同名の人が聖書中に何人も出てくるような名前でしたが、「アモス」は聖書ではこのアモス書のアモスだけです。

また、アモスは、預言者の家系の出身では無く、預言者になるまでは羊飼いであり、いちじく桑を栽培する農夫でした。アモスは自分から預言者になろうと思ったのでは無く、主の啓示によって預言者として立ち上がりました。この、主の召しについてアモスがどう思ったのかは書かれていません。しかし、このところから分かるのは、主からの召しは絶対的であり、今まで別の仕事をしていたとしても、主からの召命があるなら、断ることは難しいということです。主の召しから逃げることが難しいことは、ヨナの物語からも分かると思います。「テコアの牧者のひとりであった」という部分はさらっと読み飛ばしそうですが、今まで全く別の仕事をしていたとしても、主からの召しがあったらその仕事を辞めて、神さまが示す地へ預言をたずさえて行かなければならないということです。

そして、神さまがアモスに示された活動場所は南ユダ王国ではなく、北イスラエル王国です。アモスは、神さまからの命令により、北イスラエル王国のベテルというところへ行き、預言しました。ベテルとは「神の家」という意味で、ヤコブが神の啓示を受けて、祝福の契約を与えられた場所です。これは、創世記28章10節から19節に書かれています。しかし、ヤロブアム二世の時代、ここには金の子牛が設置されて、偶像礼拝の中心地となっていました。



U.諸国への裁きの預言


アモスは北イスラエル王国へ遣わされた預言者ですが、まず、周辺諸国に対しての裁きの預言を語っています。

最初に、ダマスコ(シリヤ)、ガザ(ペリシテ)、ツロ(フェニキア)に対してです。この3国は、北イスラエル王国とは血のつながりのない民です。

これから見ていく預言では「◯◯が犯した三つのそむきの罪、四つのそむきの罪のために」という表現が繰り返し出てきます。これは実際の罪の数が3つとか4つとか言うことではなく、罪の満ちる様を描写したもので、「三つのそむきの罪」で「不義の杯」は満ち、「四つのそむきの罪」でその杯はあふれ出ます。満ちあふれる罪のために、神さまは裁きを下されるのです。これからお話しする6つの異邦人諸国は、イスラエルに対して行った罪のゆえに裁かれます。


1.ダマスコに対して(1:3〜5)

では、まず、ダマスコに対する裁きの預言を見ていきたいと思います。

ダマスコは、イスラエルを攻撃し、苦しめた罪のゆえに裁かれます。


2. ガザとツロに対して(1:6〜10)

次に、ガザとツロに対する裁きの預言です。

ガザとはペリシテ(今のパレスチナ人)のことで、ツロとはフェニキアの事です。

ペリシテもフェニキアもユダヤ人を奴隷としてエドムに引き渡しました。

フェニキアの罪はペリシテよりも大きなものです。それは、ダビデとソロモンがフェニキアと「兄弟契約」を結んでいたからです。この契約により、イスラエルは一度もフェニキアを攻撃したことが無いのに、フェニキアはこの契約を無視して、ユダヤ人を奴隷として売り渡しました。これは明らかな契約違反です。

神さまは、「契約関係」をとても重視しておられます。

私たちがクリスチャンになるということは、神さまと契約関係を結んだということです。神さまの契約は永遠に変わることがありません。私たちはこの契約に違反するわけにはいきません。何が契約違反になるのかは後でお話ししたいと思います。


3.エドム、アモン、モアブに対して(1:11〜2:3)

ここには、エドム、アモン、モアブに対する裁きの預言が書かれています。

この3国は、ユダヤ民族とは親戚の関係にある民族です。

エドムは、ヤコブの兄エサウの子孫です。

エドム人の罪とは、まず、彼らは親戚関係にあるイスラエルに対して敵意をいだき、イスラエルを苦しめました。その敵意は一時的なものではなく、執拗で継続的なものでした。

オバデヤ書の預言がエドムに対してのものでしたが、やはり、エドム人のユダヤ人に対する反目はヤコブとエサウの不仲に起源があると思うので、かなり根が深いと思います。

次に、アモン人ですが、アモン人はアブラハムの甥のロトの子孫です。

彼らの罪は、聖書に書かれていることを読むと、自らの領土を広げるために残虐な行いをしたことです。アモンの首都ラバとは現在のヨルダンの首都アンマンですが、激戦の最中、大火災によって壊滅状態に陥ります。それと同時に、王とその首長たちはアッシリヤによって捕囚として連行されました。

次に、モアブ人ですが、モアブ人もアモン人と同じくロトの甥の子孫です。

彼らの罪は、エドム王の骨を焼いて灰にしたからだと書かれています。モアブの王は自分の息子をいけにえとしてささげるほど残忍な王でした。このことは、第二列王記3章26節から27節に書かれています。

イスラエルと親戚関係にあるこの3つの民族も神さまからの裁きを受けます。この3つの国は、神さまから特別な地位を与えられていたにもかかわらず、それを悪用し、主の御心を痛めました。神さまは非常に忍耐深く、悪人が幅をきかせていると、悪人が何度罪を犯しても裁きは無いように思えますが、神さまからの裁きは必ずあります。

また、ここまではユダとイスラエルの周辺諸国への裁きの預言だったので、聞いていた北イスラエル王国の人々は拍手喝采だったと思います。しかし、神さまの裁きの預言は周辺諸国だけにとどまりませんでした。



V. ユダに対する裁きの預言(2:4〜5)


ここには、南ユダ王国への裁きが書かれています。

南ユダ王国の罪とは、主のおしえを捨てたことです。つまり、偶像礼拝のために裁かれます。アモスは、エルサレムの宮殿が焼き尽くされることを預言していますが、これは、紀元前586年のバビロン捕囚で成就しています。



W. イスラエルに対する裁きの預言


1.イスラエルの罪(2:6〜8)

ここに書かれている北イスラエル王国の罪は、すべて、偶像礼拝に関わることです。

ツロのところでお話しした神さまは契約関係を重視するというのはここに繋がっていて、何が神さまとの契約に対する違反になるかというと、それは、偶像礼拝です。

クリスチャンは、神さまを信じますという信仰よって救われています。これは神さまとの契約です。神さまの側からこの契約が破られることはありません。そして、私たちがもしこの契約を破るとしたら、それは偶像礼拝によってです。

クリスチャンですと言って、日曜日には教会で礼拝をするけれど、お正月には神社へ初詣へ行き、お盆には茄子とかきゅうりで精霊馬を作ってご先祖様をお迎えする行事を行い、厄年には厄払いに行く、なんてことであれば、それは偶像礼拝だと分かりやすいですね。他の宗教に関わるようなことであれば、確かにそれは偶像礼拝です。

しかし、偶像礼拝とはそれだけではありません。他の宗教に関わることではなくても、もし、父なる神さまやイエス様よりも優先してしまうようなものがあるなら、それは偶像礼拝と言えるでしょう。その、代表的なものはお金だと思います。イエス様も、「金持ちが天の御国にはいるのはむずかしいことです。」(マタイ19:23)とおっしゃっています。それほどお金は偶像になりやすいものです。もちろん、お金以外の別のものであることもあります。何が自分にとって偶像になりやすいかは、よく、自分の心を調べる必要があると思います。



2.神の祝福に対する反逆(2:9〜16)

この箇所は北イスラエル王国の罪の続きです。ただし、この預言には南ユダ王国も含まれているようです。

神さまがエジプトの地からユダヤ人たちを救い出し約束の地へ導かれたとき、カナンの先住民であったエモリ人を滅ぼされました。彼らは非常に屈強な民族で、とてもユダヤ人たちに滅ぼすことができるとは思えない人々でしたが、神さまの恵みによってユダヤ人たちは約束の地を手に入れることができました。

それからずっと、ユダヤ人たちは神さまから一方的な恵みを受け続けてきましたが、彼らはそれに感謝しないばかりか、神の祝福に対して反逆しました。神さまは長い間、ユダヤ人たちが偶像礼拝から回心して神さまへ立ち返ることを待ちました。それは、ただ待っていたのではなく、預言者を通して悔い改めを促してきましたが、とうとうユダヤ人たちは悔い改めること無く、裁きの預言を現実のものとすることになってしまいました。

私たちもまた、主の恵みに対する感謝を忘れるなら、それが偶像礼拝の第一歩になるということを心に留めたいと思います。

そして、自分の人生に主が何をしてくださったか思い起こしたいと思います。主から与えられた恵みを覚え、主に感謝し、その御名をたたえたいと思います。主の一方的な恵みにより救われたと言うことを覚え、感謝するなら、それが私たちを偶像礼拝から遠ざけます。

最後に詩篇をご紹介して終わりたいと思います。

「わがたましいよ。主をほめたたえよ。私のうちにあるすべてのものよ。聖なる御名をほめたたえよ。わがたましいよ。主をほめたたえよ。主の良くしてくださったことを何一つ忘れるな。」(詩篇103:1〜2)



アモス書 1章1〜15節、2章1〜16節

1 テコアの牧者のひとりであったアモスのことば。これはユダの王ウジヤの時代、イスラエルの王、ヨアシュの子ヤロブアムの時代、地震の二年前に、イスラエルについて彼が見たものである。

2 彼は言った。「主はシオンから叫び、エルサレムから声を出される。羊飼いの牧場はかわき、カルメルの頂は枯れる。」

3 主はこう仰せられる。「ダマスコの犯した三つのそむきの罪、四つのそむきの罪のために、わたしはその刑罰を取り消さない。彼らが鉄の打穀機でギルアデを踏みにじったからだ。

4 わたしはハザエルの家に火を送ろう。火はベン・ハダデの宮殿を焼き尽くす。

5 わたしは、ダマスコのかんぬきを折り、アベンの谷から、王座についている者を、ベテ・エデンから、笏を持っている者を断ち滅ぼす。アラムの民はキルへ捕らえ移される」と主は仰せられる。

6 主はこう仰せられる。「ガザの犯した三つのそむきの罪、四つのそむきの罪のために、わたしはその刑罰を取り消さない。彼らがすべての者を捕囚の民として捕らえ移し、エドムに引き渡したからだ。

7 わたしはガザの城壁に火を送ろう。火はその宮殿を焼き尽くす。

8 わたしはアシュドデから、王座についている者を、アシュケロンから、笏を持っている者を断ち滅ぼす。わたしはエクロンにわたしの手を向け、ペリシテ人の残った者を滅ぼす」と神である主は仰せられる。

9 主はこう仰せられる。「ツロの犯した三つのそむきの罪、四つのそむきの罪のために、わたしはその刑罰を取り消さない。彼らがすべての者を捕囚の民として、エドムに引き渡し、兄弟の契りを覚えていなかったからだ。

10 わたしはツロの城壁に火を送ろう。火はその宮殿を焼き尽くす。」

11 主はこう仰せられる。「エドムの犯した三つのそむきの罪、四つのそむきの罪のために、わたしはその刑罰を取り消さない。彼が剣で自分の兄弟を追い、肉親の情をそこない、怒り続けていつまでも激しい怒りを保っていたからだ。

12 わたしはテマンに火を送ろう。火はボツラの宮殿を焼き尽くす。」

13 主はこう仰せられる。「アモン人の犯した三つのそむきの罪、四つのそむきの罪のために、わたしはその刑罰を取り消さない。彼らが、自分たちの領土を広げるために、ギルアデの妊婦たちを切り裂いたからだ。

14 わたしはラバの城壁に火を放とう。火はその宮殿を焼き尽くす。これは戦いの日のときの声と、つむじ風の日の暴風のうちに起こる。

15 彼らの王は、その首長たちとともに、捕囚として連れて行かれる」と主は仰せられる。


1 主はこう仰せられる。「モアブの犯した三つのそむきの罪、四つのそむきの罪のために、わたしはその刑罰を取り消さない。彼がエドムの王の骨を焼いて灰にしたからだ。

2 わたしはモアブに火を送ろう。火はケリヨテの宮殿を焼き尽くす。モアブは、どよめきのうちに、角笛の音と、ときの声のうちに死ぬ。

3 わたしはさばきつかさをそのうちから断ち滅ぼし、そのすべての首長たちを、彼とともに切り殺す」と主は仰せられる。

4 主はこう仰せられる。「ユダの犯した三つのそむきの罪、四つのそむきの罪のために、わたしはその刑罰を取り消さない。彼らが主のおしえを捨て、そのおきてを守らず、彼らの先祖たちが従ったまやかしものが彼らを惑わしたからだ。

5 わたしはユダに火を送ろう。火はエルサレムの宮殿を焼き尽くす。」

6 主はこう仰せられる。「イスラエルの犯した三つのそむきの罪、四つのそむきの罪のために、わたしはその刑罰を取り消さない。彼らが金と引き換えに正しい者を売り、一足のくつのために貧しい者を売ったからだ。

7 彼らは弱い者の頭を地のちりに踏みつけ、貧しい者の道を曲げ、父と子が同じ女のところに通って、わたしの聖なる名を汚している。

8 彼らは、すべての祭壇のそばで、質に取った着物の上に横たわり、罰金で取り立てたぶどう酒を彼らの神の宮で飲んでいる。

9 エモリ人を彼らの前から滅ぼしたのは、このわたしだ。彼らの背たけは杉の木のように高く、樫の木のように強かった。しかし、わたしはその上の実と下の根とを滅ぼした。

10 あなたがたをエジプトの地から連れ上り、荒野の中で四十年間あなたがたを導き、エモリ人の地を所有させたのは、このわたしだ。

11 わたしは、あなたがたの子たちから預言者を起こし、あなたがたの若者から、ナジル人を起こした。イスラエルの子らよ。そうではなかったのか。−−主の御告げ−−

12 それなのに、あなたがたはナジル人に酒を飲ませ、預言者には、命じて、預言するなと言った。

13 見よ。束を満載した車が押さえつけるように、わたしはあなたがたを押さえつける。

14 足の速い者も逃げ場を失い、強い者も力をふるうことができず、勇士もいのちを救うことができない。

15 弓を取る者も立っていることができず、足の速い者ものがれることができず、馬に乗る者もいのちを救うことができない。

16 勇士の中の強い者も、その日には裸で逃げる。−−主の御告げ−−」




説教者:菊池由美子姉