2022年6月5日
「約束の御霊と教会の誕生」
新約聖書:使徒の働き 2章全節(1節〜47節)
始めに
皆さんは桜の木の実を取って食べたことはありますか? 朝散歩していると、たくさんの小鳥が桜の木の実をついばんでいました。鳥たちに人気の木の下には、種が散乱していて、さながら宴会の後のようです。イエス様は言われました。「空の鳥を見なさい。種まきもせず、刈り入れもせず、蔵に納めることもしません。けれどもあなた方の天の父がこれを養っていて下さるのです。あなた方は、鳥よりももっとすぐれたものではありませんか。」(マタイ6: 26) 今日、天の神様からたくさんの恵みが与えられ、皆さんの霊の心を養って下さることを願っています。
聖書は、キリスト教会はペンテコステの日に始まったと教えています。ペンテコステはイエス・キリストを信じた弟子たちに初めて聖霊が与えられた日のことです。聖霊なる神様はどのようなお方なのでしょう? 今日は、ペンテコステの日に起こったできごとを皆さんと一緒に見たいと思います。そして聖霊なる神様について、皆さんと学びたいと思います。
<アウトライン>
イエス様は、復活されてから40日間、ご自身を弟子たちに現わされました。最初にマグダラのマリアに現れました。次いでエマオ途上の弟子たちに、ガラテヤ湖畔で漁をしていた弟子達に現れ、最後に天に昇りました。天に昇るときイエス様は次のように言われました。「エルサレムを離れないで、わたしから聞いた父の約束を待ちなさい。ヨハネは水でバプテスマを授けたが、もうまもなく、あなた方は聖霊のバプテスマを受けるからです。」(使徒の働き1:4・5)
1 天に昇られてから10日後に五旬節と言うユダヤの祭りの日を迎えます。この祭りは、小麦の収穫の初物を捧げ、神に喜びを表す日です。いつもは外国で生活をしている敬虔なユダヤ人たちが大勢、この祭りを祝い礼拝するためにエルサレムに来ていました。
この日、弟子たちはいつものように宮で祈りをしていました。すると突然天から激しい風が吹いてくるような響きが起こり、炎のような分かれた舌が現れて、弟子の1人ひとりの上に留リました。そして御霊が話させてくださる通りに他国の言葉で話し出したのです。宮にいた敬虔なユダヤ人たちは、弟子たちが、自分たちの国の言葉で神の大きなみわざを話しているのを見て驚きました。しかし中には、彼らは甘いぶどう酒に酔っているのだとあざける人もいました。
そこでペテロが立ち上がり、声を張り上げ、集まっていたユダヤ人たちにはっきり伝えます。「今皆さんは、今、あの預言者ヨエルが予言していたこと、神の霊が注がれるのを見ているのです。」そしてペテロは言います。「あなた方は、神がナザレ人イエスによって奇跡や力あるわざを行ったのを見ていました。それにも関わらず、イエスをローマ総督ピラトに引き渡して十字架につけて殺しました。しかし、神はそのイエスを苦しみから解き放ち、死からよみがえらせたのです。」
さらにペテロは続けます。「ダビデは詩篇の中で、自分の子孫の1人が王位に着くことと、その方が復活することを予見しています。イエスこそその方なのです。自分たちは、イエスの復活の証人なのです。」
そして最後にペテロははっきり告げます。「あなた方は、神が主ともキリストともされたイエスを十字架につけたのです。」これを聞いていた人々は心を刺されました。なぜならイエスを殺したのは自分だと気づいたからです。また復活されたイエスが救い主キリストだと分かったからです。そこで彼らは、「自分はどうしたら良いのか」とペテロに尋ねます。ペテロは答えます。「(自分の)罪を悔い改めなさい。そして、それぞれ罪を許していただくために、イエス・キリストの名によってバプテスマを受けなさい。そうすれば、賜物として聖霊を受けるでしょう。」
その日、彼の言葉を受け入れた人たち約3千人が悔い改めてバプテスマを受け、弟子になったと聖書は記しています。
2 聖霊が注がれたときに起きたこと
聖霊が天から弟子たちに注がれたとき起こったこと、それは福音宣教と悔い改めと教会の誕生です。順番に見てみましょう。
第一に福音宣教です。「みなが聖霊に満たされ、御霊が話させてくださる通りに、他国の言葉で話し出した。」(2: 4)弟子たちは「神の大きなみわざ」(2:11)を話し出しました。聖霊は、福音を全世界に述べ伝えるように導いたのです。またペテロに大胆に福音を語る力をお与えになりました。
日本ルーテル同胞教会は、アメリカ人の一人の若い宣教師の働きから生まれました。モーリス・A ・ワーダル氏です。彼は、日本ルーテル同胞教団の50周年記念誌に次のように書いています。
「1949年8月。日本に向かう船のベッドの上に私は横たわっていた。突然、恐れが私の心を満たした。「モーリス、お前がこれからやろうとしていることをどう思う。日本に行って、お前の神について彼らに語ろうと言うのか。お前は彼らの言葉を知らないし、彼らは聖書なんて全く知らないんだぞ。」私は死に物狂いで 、主に叫びました。「ああ、主よ。私にかたりかけてください。私に励ましの言葉をください。」その時、イザヤ書45章2、3節が示されました。…多くの宣教師を通して、いやそれ以上に皆さん一人一人を通して御霊が働いてくださり、福音の力によって多くの魂が救われました。東北だけでなく、日本のいたるところに「秘められている財宝」と「密かな所の隠された宝」。神様の全能の力によって救われた尊い魂を、私たちは見ることができます。彼らの多くは、日本ルーテル同胞教団に至りました。神様は、ご自身が主であることを示すために、これをなさいました。」
2つ目は悔い改めです。聖霊は、ペテロの話しを通して、ユダヤ人たちに自分の罪深さを示し、主イエスが自分の救い主であるという信仰に導きました。同じように私たちも、聖霊の導きで自分の罪に気付かされ、イエス・キリストを信じてバプテスマを受けました。
3つ目に教会の誕生です。この日新しく弟子になった人たちも加わり、教会が生まれました。使徒の働き2章43節から47節です。
ここで44節と45節について少し説明をしますと、(「信者となった者たちはみな一緒にいて、一切のものを共有にしていた。そして、資産や持ち物を売っては、それぞれの必要に応じて、みなに分配していた。」)新たに3千人が弟子になったといっても、ユダヤ全体から見れば僅かです。イエスを救い主と信じるユダヤ人とそうでないユダヤ人との間に摩擦が起きます。「1世紀の終わりまでには、ユダヤ人信者たちの多くは、会堂から破門された。それで、信じるユダヤ人は、聖餐や祈り、キリストについての学びのために、個人の家に集まることを余儀なくされた。」(Bible Navi p1149)のです。
この時の教会の様子は、弟子たちがしていたこと、弟子たちの様子、周囲の評判の3つにまとめることができます。
弟子たちは「使徒たちの教えを固く守り、交わりをし、パンを裂き、祈りをしていた。」今のことばで言うと、説教を聞き、聖書を読み、交わりをし、聖餐に預かり、祈りをしていました。
弟子たちは「毎日、心を1つにし、宮に集まり、家でパンを裂き、喜びと真心を持って食事をともにし、神を賛美し」ていました。「愛を持って互いに仕えあう」(ガラテヤ6:13)教会がありました。
また弟子たちは「すべての民に好意をもたれた。」 私たちの教会もこれをお手本にしたいと思います。
3 御霊に導かれて
使徒信条にあるとおり、私たちの信じる神様は三位一体の神様。父なる神、子なる神、聖霊の神。父なる神は造る神、子なる神は許す神、聖霊の神は聖める神です。イエス様は、地上の生涯の中で次のように聖霊について語られました。
・「まことに、まことに、あなたに告げます。人は水と御霊によって生まれなければ、神の国に入ることができません。」(ヨハネ3: 5、ニコデモに対して)
・「この水を飲むものがだれでも、また渇きます。しかし、わたしが与える水を飲むものは誰でも、決して渇くことがありません。わたしが与える水は、その人のうちで泉となり、永遠の命への水がわき出ます。」(ヨハネ4: 14、 サマリアの女に対して)
十字架にかかる前、最後の晩餐の時には、弟子たちにこのように話されました。
・「わたしは父にお願いします。そうすれば、父はもう1人の助け主をあなた方にお与えになります。その助け主がいつまでもあなた方と、共におられるためにです。その方は、真理の御霊です。」(ヨハネ14: 16)
・「しかし、その方、すなわち真理の御霊が来るとあなた方をすべての真理に導き入れます。御霊は自分から語るのではなく、聞くままを話し、またやがて起ころうとしていることをあなた方に示すからです。」 (ヨハネ16:13)
・「御霊はわたしの栄光を表します。わたしのものを受けて、あなた方に知らせるからです。」(ヨハネ16: 14)
イエス・キリストを信じる私たちは、この御霊を与えられています。御霊は、私たちを日々悔い改めに導いて下さり、私たちが、神の子として歩むように、御霊の実を結ぶように導いてくださるのです。本当に感謝なことです。
「もし私たちが御霊によって生きるのなら、御霊に導かれて進もうではありませんか。」
(ガラテヤ5: 25)
<使徒の働き 2章1〜47節>
1 五旬節の日になって、みなが一つ所に集まっていた。
2 すると突然、天から、激しい風が吹いて来るような響きが起こり、彼らのいた家全体に響き渡った。
3 また、炎のような分かれた舌が現れて、ひとりひとりの上にとどまった。
4 すると、みなが聖霊に満たされ、御霊が話させてくださるとおりに、他国のことばで話しだした。
5 さて、エルサレムには、敬虔なユダヤ人たちが、天下のあらゆる国から来て住んでいたが、
6 この物音が起こると、大ぜいの人々が集まって来た。彼らは、それぞれ自分の国のことばで弟子たちが話すのを聞いて、驚きあきれてしまった。
7 彼らは驚き怪しんで言った。「どうでしょう。いま話しているこの人たちは、みなガリラヤの人ではありませんか。
8 それなのに、私たちめいめいの国の国語で話すのを聞くとは、いったいどうしたことでしょう。
9 私たちは、パルテヤ人、メジヤ人、エラム人、またメソポタミヤ、ユダヤ、カパドキヤ、ポントとアジヤ、
10 フルギヤとパンフリヤ、エジプトとクレネに近いリビヤ地方などに住む者たち、また滞在中のローマ人たちで、
11 ユダヤ人もいれば改宗者もいる。またクレテ人とアラビヤ人なのに、あの人たちが、私たちのいろいろな国ことばで神の大きなみわざを語るのを聞こうとは。」
12 人々はみな、驚き惑って、互いに「いったいこれはどうしたことか」と言った。
13 しかし、ほかに「彼らは甘いぶどう酒に酔っているのだ」と言ってあざける者たちもいた。
14 そこで、ペテロは十一人とともに立って、声を張り上げ、人々にはっきりとこう言った。「ユダヤの人々、ならびにエルサレムに住むすべての人々。あなたがたに知っていただきたいことがあります。どうか、私のことばに耳を貸してください。
15 今は朝の九時ですから、あなたがたの思っているようにこの人たちは酔っているのではありません。
16 これは、預言者ヨエルによって語られた事です。
17 『神は言われる。終わりの日に、わたしの霊をすべての人に注ぐ。すると、あなたがたの息子や娘は預言し、青年は幻を見、老人は夢を見る。
18 その日、わたしのしもべにも、はしためにも、わたしの霊を注ぐ。すると、彼らは預言する。
19 また、わたしは、上は天に不思議なわざを示し、下は地にしるしを示す。それは、血と火と立ち上る煙である。
20 主の大いなる輝かしい日が来る前に、太陽はやみとなり、月は血に変わる。
21 しかし、主の名を呼ぶ者は、みな救われる。』
22 イスラエルの人たち。このことばを聞いてください。神はナザレ人イエスによって、あなたがたの間で力あるわざと不思議としるしを行われました。それらのことによって、神はあなたがたに、この方のあかしをされたのです。これは、あなたがた自身がご承知のことです。
23 あなたがたは、神の定めた計画と神の予知とによって引き渡されたこの方を、不法な者の手によって十字架につけて殺しました。
24 しかし神は、この方を死の苦しみから解き放って、よみがえらせました。この方が死につながれていることなど、ありえないからです。
25 ダビデはこの方について、こう言っています。『私はいつも、自分の目の前に主を見ていた。主は、私が動かされないように、私の右におられるからである。
26 それゆえ、私の心は楽しみ、私の舌は大いに喜んだ。さらに私の肉体も望みの中に安らう。
27 あなたは私のたましいをハデスに捨てて置かず、あなたの聖者が朽ち果てるのをお許しにならないからである。
28 あなたは、私にいのちの道を知らせ、御顔を示して、私を喜びで満たしてくださる。』
29 兄弟たち。父祖ダビデについては、私はあなたがたに、確信をもって言うことができます。彼は死んで葬られ、その墓は今日まで私たちのところにあります。
30 彼は預言者でしたから、神が彼の子孫のひとりを彼の王位に着かせると誓って言われたことを知っていたのです。
31 それで後のことを予見して、キリストの復活について、『彼はハデスに捨てて置かれず、その肉体は朽ち果てない』と語ったのです。
32 神はこのイエスをよみがえらせました。私たちはみな、そのことの証人です。
33 ですから、神の右に上げられたイエスが、御父から約束された聖霊を受けて、今あなたがたが見聞きしているこの聖霊をお注ぎになったのです。
34 ダビデは天に上ったわけではありません。彼は自分でこう言っています。『主は私の主に言われた。
35 わたしがあなたの敵をあなたの足台とするまではわたしの右の座に着いていなさい。』
36 ですから、イスラエルのすべての人々は、このことをはっきりと知らなければなりません。すなわち、神が、今や主ともキリストともされたこのイエスを、あなたがたは十字架につけたのです。」
37 人々はこれを聞いて心を刺され、ペテロとほかの使徒たちに、「兄弟たち。私たちはどうしたらよいでしょうか」と言った。
38 そこでペテロは彼らに答えた。「悔い改めなさい。そして、それぞれ罪を赦していただくために、イエス・キリストの名によってバプテスマを受けなさい。そうすれば、賜物として聖霊を受けるでしょう。
39 なぜなら、この約束は、あなたがたと、その子どもたち、ならびにすべての遠くにいる人々、すなわち、私たちの神である主がお召しになる人々に与えられているからです。」
40 ペテロは、このほかにも多くのことばをもって、あかしをし、「この曲がった時代から救われなさい」と言って彼らに勧めた。
41 そこで、彼のことばを受け入れた者は、バプテスマを受けた。その日、三千人ほどが弟子に加えられた。
42 そして、彼らは使徒たちの教えを堅く守り、交わりをし、パンを裂き、祈りをしていた。
43 そして、一同の心に恐れが生じ、使徒たちによって多くの不思議としるしが行われた。
44 信者となった者たちはみないっしょにいて、いっさいの物を共有にしていた。
45 そして、資産や持ち物を売っては、それぞれの必要に応じて、みなに分配していた。
46 そして毎日、心を一つにして宮に集まり、家でパンを裂き、喜びと真心をもって食事をともにし、
47 神を賛美し、すべての民に好意を持たれた。主も毎日救われる人々を仲間に加えてくださった。