2022年4月3日



「贖われた民への約束」

旧約聖書:詩篇107篇全



 この詩篇は、イスラエルの民がバビロン捕囚からユダヤの地に帰ってきてまだあまり年月がたたない時に書かれました。紀元前597年、イスラエルの民は、新バビロニア王国の捕囚の民として諸国に散らされました。この詩篇には、神様が、そのイスラエルの人たちを見捨てず、共におられたことが書かれています。


 1節「主に感謝せよ」。感謝の理由は、ペルシア帝国の王クロスによって祖国に帰ることができたことだけではありません。1節後半にあるように「主が慈しみ深い方であり、とこしえまで恵みを与えて下さる方」だからです。

2節「主に贖われた者」。贖いとは「代償を払うことによって、ある人を買い戻す、または自由にする」と言う意味です。クリスチャンにとって「贖い」とはキリストによる救いを意味します。イエス・キリストが私の罪を負い、私の身代わりとなって死んで下さった、それが贖いです。


 4節から32節は4つの場面に分かれます。

4節と5節。「彼らは、荒野や荒地をさまよい、住むべき町へ行く道を見つけなかった。飢えと渇きに彼らのたましいは衰え果てた。」私たちも人生の目的を見失い、荒野や荒地をさまようような経験をすることがあります。しかし、6節と7節。「この苦しみのときに、彼らが主に向かって叫ぶと、主は彼らを苦悩から救い出された。また彼らをまっすぐな道に導き、住むべき町へ行かせられた。」主は私たちを導いて下さる方なのです。        


 10節から12節。「やみと死の陰に座す者、悩みと鉄のかせに縛られているもの、彼らは神のことばに逆らい、いと高き方のさとしを侮ったのである。それゆえ主は苦役を持って彼らの心を低くされた。彼らはよろけたが、だれも助けなかった。」ここにあるのは闇と暗黒です。心の問題に置き換えて考えてみましょう。止めたいと思っている悪い習慣を止めることができない。許したいと思っている人を許すことができない。何とか理屈をつけて、自分で合理化してやり過ごしている。そのよう心の状態は、「悩みと鉄のかせに縛られている」状態です。聖書ではそれを「罪の奴隷である」と言います。

しかし、13節と14節。「この苦しみのときに、彼らが主に向かって叫ぶと、主は彼らを苦悩から救われた。主は彼らをやみと死の陰から連れ出し、彼らのかせを打ち砕かれた。」

主は私たちを解放してくださる方なのです。


 17節と18節。「愚か者は、自分のそむきの道のため、また、その咎のために悩んだ。彼らのたましいは、あらゆる食物を忌み嫌い、彼らは死の門にまで着いていた。」愚か者が自分の罪深さに悩んで病気になった。これも心の問題です。世間の人は、病気になるのは気持ちが弱いからだといいます。

しかし、聖書は違います。19節と20節。「この苦しみのときに、彼らが主に向かって叫ぶと、主は彼らを苦悩から救われた。主はみことばを送って彼らをいやし、その滅びの穴から彼らを助け出された。」主は私たちを癒してくださる方なのです。


 23節から27節。(本文省略) 船で商いをする者が海で荒波に会い、死の恐怖を味わったというのです。古代ですから、気象衛星はおろか羅針盤(発明は14世紀始め)もない。海上貿易で航海中に、海が荒れだしたと言うのです。

 私たちも、自分でどうすることもできない状況に直面します。学校や会社でもいじめやリストラなど様々なことがあります。苦しくて逃げたくても自分ではどうすることもできない状況。地震や戦争もそうです。

しかし、28節から30節。「この苦しみの時に、彼らが主に向かって叫ぶと、主は彼らを苦悩から連れ出された。」主は私たちを守ってくださる方なのです。


 4つの場面の共通点に注目しましょう。6節、13節、19節、28節。「この苦しみの時に、彼らが主に向かって叫ぶと、主は彼らを苦悩から救い出された(救われた、連れ出された、その滅びの穴から彼らを助け出された)」苦しい時、辛い時に私たちが神様に向かって叫ぶならば、神様は救い出してくださるのです。


 誰でも、イエスキリストを信じるならば、むなしい生き方から救い出され、イエスと共に歩むことができます。「主の御名を呼び求める者はだれでも救われる。」(ローマ10章13節)苦しみの時、悩みの時、主に叫ぶならば、主は助けてくださいます。主に「感謝」をすることができます。主イエス・キリストを信じましょう。



説教:加藤 正伸 長老



<旧約聖書:詩篇107篇全>

1 「主に感謝せよ。主はまことにいつくしみ深い。その恵みはとこしえまで。」

2 主に贖われた者はこのように言え。主は彼らを敵の手から贖い、

3 彼らを国々から、東から、西から、北から、南から、集められた。


4 彼らは荒野や荒れ地をさまよい、住むべき町へ行く道を見つけなかった。

5 飢えと渇きに彼らのたましいは衰え果てた。

6 この苦しみのときに、彼らが主に向かって叫ぶと、主は彼らを苦悩から救い出された。

7 また彼らをまっすぐな道に導き、住むべき町へ行かせられた。

8 彼らは、主の恵みと、人の子らへの奇しいわざを主に感謝せよ。

9 まことに主は渇いたたましいを満ち足らせ、飢えたたましいを良いもので満たされた。


10 やみと死の陰に座す者、悩みと鉄のかせとに縛られている者、

11 彼らは、神のことばに逆らい、いと高き方のさとしを侮ったのである。

12 それゆえ主は苦役をもって彼らの心を低くされた。彼らはよろけたが、だれも助けなかった。

13 この苦しみのときに、彼らが主に向かって叫ぶと、主は彼らを苦悩から救われた。

14 主は彼らをやみと死の陰から連れ出し、彼らのかせを打ち砕かれた。

15 彼らは、主の恵みと、人の子らへの奇しいわざを主に感謝せよ。

16 まことに主は青銅のとびらを打ち砕き、鉄のかんぬきを粉々に砕かれた。


17 愚か者は、自分のそむきの道のため、また、その咎のために悩んだ。

18 彼らのたましいは、あらゆる食物を忌みきらい、彼らは死の門にまで着いていた。

19 この苦しみのときに、彼らが主に向かって叫ぶと、主は彼らを苦悩から救われた。

20 主はみことばを送って彼らをいやし、その滅びの穴から彼らを助け出された。

21 彼らは、主の恵みと、人の子らへの奇しいわざを主に感謝せよ。

22 彼らは、感謝のいけにえをささげ、喜び叫びながら主のみわざを語れ。


23 船に乗って海に出る者、大海であきないする者、

24 彼らは主のみわざを見、深い海でその奇しいわざを見た。

25 主が命じてあらしを起こすと、風が波を高くした。

26 彼らは天に上り、深みに下り、そのたましいはみじめにも、溶け去った。

27 彼らは酔った人のようによろめき、ふらついて分別が乱れた。

28 この苦しみのときに、彼らが主に向かって叫ぶと、主は彼らを苦悩から連れ出された。

29 主があらしを静めると、波はないだ。

30 波がないだので彼らは喜んだ。そして主は、彼らをその望む港に導かれた。

31 彼らは、主の恵みと、人の子らへの奇しいわざを主に感謝せよ。

32 また、主を民の集会であがめ、長老たちの座で、主を賛美せよ。


33 主は川を荒野に、水のわき上がる所を潤いのない地に、

34 肥沃な地を不毛の地に変えられる。その住民の悪のために。

35 主は荒野を水のある沢に、砂漠の地を水のわき上がる所に変え、

36 そこに飢えた者を住まわせる。彼らは住むべき町を堅く建て、

37 畑に種を蒔き、ぶどう畑を作り、豊かな実りを得る。

38 主が祝福されると、彼らは大いにふえ、主はその家畜を減らされない。


39 彼らが、しいたげとわざわいと悲しみによって、数が減り、またうなだれるとき、

40 主は君主たちをさげすみ、道なき荒れ地に彼らをさまよわせる。

41 しかし、貧しい者を悩みから高く上げ、その一族を羊の群れのようにされる。

42 直ぐな人はそれを見て喜び、不正な者はすべてその口を閉じる。

43 知恵のある者はだれか。その者はこれらのことに心を留め、主の恵みを悟れ。